か行 M&A用語集

会社分割(Divestiture) 企業組織再編の方法の一つで、既存の会社の部門の全部または一部を、他の会社に包括的に継承させることにより会社を分割すること。不採算部門を切り離したり、あるいは成長部門を子会社として切り離すなどして、経営効率を高めることができる。
会社分割が制度として導入されたのは最近のことで、2001年の商法改正による。それ以前の会社分割には事業譲渡(当時は営業譲渡と呼称)のスキームを使用していたが、商法改正以降はこのスキームが使用されることが多い。会社分割に特化した制度であるため、事業譲渡による分割スキームと比較して分割プロセスが簡素かつ明確になっている点に両者の差異がある。
買い手価値(Buyer’s Value) M&Aにおける、買い手側から見た売却企業の適正市場価値のこと。バイヤーズバリューとも。これに対し、売り手側から見た企業の適正市場価値のことを売り手価値と言う。適正市場価値にシナジー価値を足すことによって算出することができる。
買い手価値、売り手価値ともにそれぞれの立場からの主観に基づく評価であるため、最終的な譲渡価格は交渉の結果決定される。
加重平均資本コスト 資金調達に伴うコストを債務等の他人資本、出資金等の自己資本に分け、それぞれの資本構成の割合に応じて加重平均したもの。
他人資本は返却期限や返却方法が予め規定されるうえ債務整理でも優先して弁済を受けることが出来ることから、投資側は低リスクで運用することが出来る。そのため、他人資本は調達あたって高いプレミアムを支払う必要が無い、低コストで調達できる資本であると言える。一方、自己資本には、他人資本に見られるような優遇措置は存在しないため、比較的高いリターンを必要とする高コストな資本であると言える。このように資本のコストは出自に大きく影響されるため、ある企業の資本コストを正確に知には他人資本と自己資本を加重平均する必要がある。具体的には、加重平均資本コストは以下の式を使うことによって求めることが出来る。

加重平均資本コスト=有利子負債残高×負債利率×(1-実効税率)+自己資本残高×自己資本要求利回り

加重平均資本コスト(WACC)は、投資判断に多く使用される。その場合、投資先プロジェクトの内部収益率(IRR)と加重平均資本コスト(WACC)を用い、前者から後者を引いたものがそのプロジェクトの収益力であるとみなすことが出来る。
合併(Merger) 複数の会社が法的な手続を経て、一つの企業に集約すること。
一方の会社が他方の会社の権利義務を承継する吸収合併と、複数の会社が会社を新設してそこに権利義務を承継させる新設合併の二種類がある。後者の場合、新しい定款の作成手続きが複雑になり、費用もかかるため吸収合併が多くの場合用いられる。また、1998年の関連法改正によって純粋持株会社の設立が可能になって以降、株式移転等で持株会社を設立し、持株会社にぶら下げる形で企業を吸収統合するケースが増えている。
ちなみに合併される会社の事業規模や知名度が同程度の場合は対等合併、大きな差がある場合には吸収合併と呼ぶ場合があるが、それらは社会的な慣用表現に過ぎず、法的には両者共に吸収合併である。
株価収益率(PER, Price Earning Ratio) PERのこと。株価が企業の収益の何倍まで買われているかを示すために、その株価をEPS(一株当たり利益)で除して求められる指標のこと。アメリカではP/Eと表記するのが一般的である。 PERが高いほど利益に比べて株価が割高であることを示す。翻って言えば、PERの高さは今後の利益向上への期待の現われであると捉えることもできる。
株価純資産倍率(PBR, Price Book-value Ratio) PBRのこと。株価が1株当たり純資産(株主資本)の何倍まで買われているのかを示すために、株価を1株当たり純資産(株主資本)で除して求められる指標のこと。アメリカではP/Bと表記するのが一般的である。
PBRが1倍であるときに純資産と時価総額が等しくなることから、PBRが1倍をきる場合には、企業を清算して資産を分配した方が株主にとっては有益である可能性がある。。
株価倍率法 マルチプル法、類似株価比準法とも。企業価値評価のマーケット・アプローチの一つで、対象が未上場会社である場合に多く用いられる。同業他社の利益、売上、純資産等と市場株価を比較した倍率を算出し、その倍率を対象企業の利益水準や純資産に適用することによって企業価値や事業価値を算出する方法。倍率算出に用いる指標により、PER法、PBR法、EBITDA法、EBIT法などがある。
株価倍率法では、客観的な倍率を設定するにはそれなりに多数の同業他社サンプルが必要になる。その場合、価値算出対象企業とは違う性格を持った企業を注意深くスクリーニングしなければならない。
株式移転 企業組織再編を目的としたM&A手法の一つで、既存株式会社の株主が、新設株式会社に対し、保有する「既存子会社の株式」を交付する見返りに、その「新設法人の株式」の交付を受けるスキームのこと。株式移転を行った場合、既存会社は新設会社の100%子会社となる。
株式交換制度が既存会社を親会社とするのに対して、株式移転では新設会社が親会社となる点に差異がある。
株式公開買付(Takeover BidまたはTender Offer Bid ) 経営権を握るために、企業などが公に発表して株式市場を通さずに不特定多数の株主から株式を買い集める方法。その際、買い付ける期間、株数、価格等を明示しなければならない。
株式交換(Stock-for-stock Exchange) 企業組織再編を目的としたM&A手法の一つで、売り手企業の株主が、買い手企業に対し、保有する「売り手企業の株式」を交付する見返りに、「買い手企業の株式」の交付を受けるスキームのこと。株式交換を行った場合、既存会社は新設会社の100%子会社となる。
株式交換と似たスキームに株式移転があるが、株式交換制度が既存会社を親会社とするのに対して、株式移転では新設会社が親会社となる点に差異がある。
株式時価総額(Market Capitalization) 時価総額の項を参照。
株式資本コスト(Cost of Shareholders’ Equity) 株主期待収益率と同じ。CAPMなどの手法を用いて算出する。
株主価値(Shareholders’ Value) 企業価値のうち、株主に帰属する部分のこと。一般的に、「事業価値 + 非事業資産 ― 有利子負債-少数株主持分」で求めた価値のことをいう。理論的には、「株主価値(=時価総額)=株価×発行株式数」となる。
企業価値(Enterprise Value) 企業全体の価値を金銭に換算したもの。一般的に、「企業価値 = 事業価値 + 非事業資産 = 株主価値 + 有利子負債」となる。しかし事業価値や株主価値の算定にあたっては「マーケットアプローチ」、「コストアプローチ」、「インカムアプローチ」といったいくつかの方法があるため、用いる手法によって企業価値に差が生まれることになる。
企業価値評価(Valuation) 買収企業が被買収企業を買収する際にいくらで買うかを決めるために、インカム・アプローチ、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ等の手法を用いて企業の価額を求めること。この際には、企業価値だけでなく、事業価値、株式価値をはじめ、さまざまな価値評価が実施される。
企業規模最大化仮説(Size Maximization Hypothesis) 経営者が、株主価値を最大化させることよりも企業規模を最大化させることを優先するという仮説。この仮説に従えば、経営者は、株主価値を毀損する企業買収を行う恐れがある。
期待収益率(Expected Rate of Return) ある資産について将来にわたる運用から獲得することが期待できる平均的な収益率(リターン)のことをいう。投資する資金に対して、どれくらいの収益が見込めるかを示したもので、投資額に対してどれくらいの収益が得られると期待するのかをあらわす率のこと。
株主は投資をする際に資本コスト(=期待収益率)を頭に入れて投資をする。
基本合意書 本契約に先立って結ぶ合意書で、買収対象、大凡の買収価格、独占的交渉権、デュー・デリジェンスの項目等を売り手と買い手の間で合意する契約書のこと。近年基本合意書の法的拘束力が争われるケースが増えてきたが、判例によると基本合意書の法的拘束力は比較的脆弱なものであると言える。
逆のれん代 買収価格が被買収企業の純資産額を下回る場合、含み益となるその差額のことをいう逆のれん代の償却は営業外収益になるため、経常利益を押し上げる。
ただ、これらの利益は会計上の処理の結果生まれるものであるため、キャッシュフローには全く影響を与えないない。負ののれん代とも言う。
キャッシュ・アウト・マージャー(Cash-out Merger) 吸収合併の形式の一つで、株式ではなく、現金を対価とする合併のこと。この場合、消滅会社の株主は、対価を現金で受け取るので、存続会社の株主にはならない。そのため、合併によって存続会社の株主構成に変化が生まれない点に本スキームの特徴がある。2006年の会社法改正で解禁された。交付金合併とも。
グッドウィル(Goodwill) 企業の無形資産の一つで、企業収益の源泉となりうるブランド力や社会的信用力を総称してこう呼ぶ。買収価格が被買収企業の純資産額を上回る場合、その差額が営業権の価格にあたる。暖簾(のれん)、営業権ともいう。買収価格が非買収企業の純資産額を下回る場合は「負ののれん代」あるいは「逆のれん代」という。
クラウン・ジュエル(Crown Jewel) 敵対的買収防衛策の一つ。敵対的買収を仕掛けられた企業(=クラウン、王冠)の主要な資産や、有力な事業、技術など(=ジュエル、宝石)、あるいはそれらを保有する子会社のこと。被買収企業はそれらを売却し買収側企業の買収意欲を失わせることによって敵対的買収防衛策とすることができる。ややスラング気味に「焦土作戦」と呼ばれることもある。
会社が重要な営業を第三者に譲渡する場合、株主総会の決議が必要になる。しかし、財産の処分は取締役会の議決のみで十分である。とは言え安易な資産譲渡を決定した取締役は、取締役としての善管注意義務、忠実義務違反を問われる可能性があるといわれているため注意が必要だ。
クロージング(Closing) 直訳すると「閉じること」。営業活動の最終段階で、商品の購買を確定させ商談を「閉じる」最後の行動やトークをさす。
M&Aの場合、買い手企業と売り手企業が買収金額やその他条件に合意し、最終契約書を締結の上、買収対価の払い込みをもってクロージングとすることが多い。
経済付加価値(Economic Value Added) アメリカのコンサルティング会社、SternStewart社が開発(商標登録)した経営指標で、経済付加価値と訳される。EVA = NOPAT(Net Operating Profit after Tax) – 投下資本 x WACC の計算式により、ある事業が株主が期待する以上の利益(価値)を生んでいるかを測る。EVAがプラスであれば、株主価値を増大させており、マイナスであれば株主価値を毀損していることになる。
現在価値(PV, Present Value) キャッシュ・フローを一定の割引率で除して現在の価値に換算したもの。
減損会計 固定資産の時価が大幅に簿価を下回り、含み損が発生した場合に、その差額を損失として財務諸表に反映させる会計制度のこと。
減損テスト 買収後計上された営業権(のれん)を償却していくのではなく、営業権(のれん)が計上された事業の価値を毎年DCF法で算定し、その事業の簿価と比較して減損をチェックすること。
ゴーイング・コンサーン(Going Concern) 日本語では永続企業という。DCF法等では、その企業が永続的に事業を継続することを前提に、企業価値評価を行う。
コスト・アプローチ(Cost Approach) 企業価値評価の手法の中の時価純資産(+営業権)を用いた評価方法の総称。他にインカム・アプローチやマーケット・アプローチがある。
5%ルール 公開会社の発行済株式総数の5%を超えて取得した者は、取得日から5日以内に内閣総理大臣等に対して大量保有報告書等を提出しなければならず、またその保有割合が1%以上変動した場合にも変更報告書を提出しなければならないとする制度。
コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance) 企業統治と呼ばれる。企業経営のチェック体制を明確にし、経営者の独断による暴走をけん制し、株主や従業員といったステークホルダーの利害調整をするためのメカニズム。
ゴールデン・パラシュート(Golden Parachute) 敵対的買収防衛策の一つで、敵対的買収によって経営陣が解任された際に巨額の割り増し退職金を支給する(多額のお金を持って飛び降りる)ことを予め規定し、敵対的買収者の買収コストを膨らませ、買収意欲をそぐ方法。
コングロマリット・ディスカウント(Conglomerate Discount) 多角的事業を行う企業を相対的に低く評価する現象のこと。投資家は、株式市場で自らリスクを分散させることができるため、事業内容が複雑な多角的事業を行う企業に投資することを避ける傾向があるという仮説がある。
コントロール・プレミアム(Control Premium) M&Aで企業買収を行う際、被買収企業の過半数の株式を買収できる場合に、経営支配権に対して支払われる上乗せ価値(プレミアム)のこと。