シャルレのMBO失敗に見るTOBでの経営陣による株主背任。

 2008年12月の、大証2部上場の下着販売会社シャルレのMBOが失敗に終わった。TOBを進めていたシャルレの創業者一族が不当に買い付け価格を引き下げていたという疑惑が発覚したためだ。創業者社長とシャルレは2008年9月19日にTOBによるMBOを発表していたが、翌月半ばから疑惑の内部通報が相次ぎ、12月には創業家と会社側が決裂してTOBは不成立に、そして同月31日には株主への背任行為が明らかになった創業者社長が解任される形で事態は終結した。

 MBOを仕掛ける側の経営者は、構造的に不可避の矛盾を抱えることになる。買収を仕掛ける側の立場としては株価を低く押さえたいところだが、株主の利益を尊重するなら株価は高値の方が望ましいからだ。そのため、株主は「経営者は不当に低い価格で買収しようとしているのではないか」という疑念を常に抱えることになる。今回のシャルレの例では、その疑念が的を射ていたわけだ。

 創業者側が算出した株価は646円~908円で、TOB発表前に会社側が算出した1104円~1300円とは大きな開きがあった。そこで創業者側は、利益を不当に低く見もった新経営計画を作り直すよう会社側を説得し、算出株価を引き下げたのだ。

 利益を低く見積もった新経営計画の策定と開示は、明確な形で金融証券取引法や証券取引所のルールに違反しているとは言えない。しかし、本件が株主への背任行為であることは間違いない。つまり、本件はMBOやTOBを実効的に管理している法令やルールに不備があることを明示する事例であると考えられる。実際のところ、例えば昨年12月施行の金融証券取引法ではTOBに関係するルールが充実されたが、その多くは買収側の行動を規制するためのもので、非買収側の企業は罰則の対象となるケースは少ない。本件を良い契機として、非買収側企業の株主背任行為へのルール作りを考えていくべきだろう。