化学業界でM&Aが進む理由とは。
ここ数年、大手化学メーカーはM&Aなどを介して事業ポートフォリオを組み替え続けてきた。その背景には、本国市場の飽和、製品の汎用化、原材料費の高騰といった要因で収益力の向上が難しくなってきた点が挙げられる。
汎用品は需給バランスや市況の影響を受けやすい。そのため売上に占める汎用品の割合が高い上に収益事業の分散を怠ってきた企業は、今後かなり厳しい環境におかれることになる。その反面、M&Aや資本・業務提携を介して事業ポートフォリオを臨機応変に運用してきた企業は、体力を温存しながらこの状況を切り抜けることができるだろう。今、化学業界は全体が厳しい環境におかれているが、その中でも二極化が一段と進むと思われている。とは言え、比較的安全な状況にある企業もその地位に安穏としているほどの時間は無い。12月分の日銀短観にも現れているとおり、景況の先行きは依然最悪に近い。
M&Aは有利子負債の調達を伴うことが多いため、短期的には財務上のネガティブ要因となる。しかしその結果、製品ラインナップの拡大や川下・川上分野の獲得によるマーケティングや調達・生産コストの削減、技術力の向上などが見込まれるため、中長期的にはポジティブ要因となると考えられる。
国内化学企業の大手で総合化学メーカーと呼ばれる旭化成、東レ、住友化学など各社は規模も大きく事業基盤が強固である上、国内外の市場に収益事業を分散している。そのため原材料の変動や景気後退においてある程度耐性を持つことから、更に事業拡大を見込んでM&Aを行ったとしても財務上の大きな瑕疵となる可能性は少ない。であればこそ、今のうちに事業ポートフォリオを更に補強するM&Aや合弁事業を考えておく必要がある。財務体質に余力が無くなってからでは遅いのだから。







