M&Aと税務(株式譲渡の場合)
M&Aに関連する税務は、非常に複雑であるため、詳細な説明は避け、以下に実務上ポイントとなる事項を述べることにする。
株式売買時の税務
―買い手の税務の注意点―
① 株式取得の税務
株式売買の場合の買い手側には、原則として税金は発生しない。ただし、以下の場合には課税問題が発生する可能性があるので注意を要する。
・株式の売買価格が税務上の時価より低ければ、その差額は買収会社において受贈益とみなされる。
・逆に株式の売買価格が税務上の時価より高ければ、買収会社において譲渡法人に対する寄付金として処理される可能性がある。
② 有利な発行価格による第三者割当増資を引き受けた場合の税務 有利な発行価額により新株が発行された場合には、株主に対して平等に割り当てられた場合を除いて、その株式の時価と実際の払込金額との差額について、引受法人で受贈益として計上する必要がある。
なお、「有利な発行価額」とは、おおむねその株式の時価と新株の発行価額の差額がその株式の時価の10%相当額以上である場合をいう。
―売り手の税務の注意点―
①株式売却の税務(個人株主の場合)
・株式譲渡時の税率は以下のとおりである。
●株式譲渡時の税率:20%(所得税15%、住民税5%)
●譲渡益の計算:譲渡収入金額-(所得費+譲渡費用+借入金利子等)
・株式の売買価格が税務上の時価より低ければ、その差額は株式譲渡人が法人であれば買収会社に対する寄付金とみなされる。譲渡人が個人の場合には原則として時価の2分の1以上の譲渡については時価課税されないが、2分の1未満であれば時価課税される。
・逆に株式の売買価格が税務上の時価より高ければ、その差額は譲渡人が法人であれば譲渡法人の受贈益として課税され、個人であれば買収会社からの贈与となれば一時所得、役員への賞与であれば給与所得、または退職所得とみなされる。
② 役員退職金の支給
株式売買の場合に被買収会社の株主が同時に役員をなっているとき、通常、株式売買代金のうち一部を役員退職金として支払うケースがあるが、これは売り手及び買い手双方に税務上のメリットがある。
ただし、役員退職金のうち、不相当に高額な部分は支給した被買収会社で経費として処理できない場合があるので注意が必要である。
(参考文献:森信静治・川口義信・湊雄二著「M&Aの戦略と法務」日本経済新聞社)










